キャバクラの役職者が「自分でやった方が早い」と思った時はどうする?|部下へ任せるか判断する基準【黒服学科・現役店長監修】

この講義で学べること

役職者になると、部下へ仕事を任せなければならない場面が増えます。

その一方で、現場では何度もこう感じることがあります。

「これなら自分でやった方が早い」

実際、経験のある役職者が自分で処理した方が、その場では早く終わる仕事はあります。

しかし、毎回それを続けると、

  • 部下へ経験が渡らない
  • 役職者に仕事が集中する
  • 部下がいつまでも同じ仕事をできない
  • 役職者が不在になると仕事が止まる
  • 管理職本人が上位業務へ進めない

という問題が起こります。

「自分でやった方が早い」は、今日だけを見れば正しいことがあります。しかし、管理職は今日の速さだけでなく、次回以降に誰ができるようになるかまで考える必要があります。

この講義では、役職者自身が対応するべき場面と、時間がかかっても部下へ任せるべき場面をどう分けるか整理します。

判断の基本

今すぐの速さだけを見る
→ 自分でやる

次回以降の組織まで見る
→ 教えて任せる

短期効率と長期育成を使い分ける

キャバクラの役職者が自分で仕事を処理するか部下へ任せるかを、短期効率と長期育成から判断する考え方を示した図解

「自分でやった方が早い」は間違いではない

最初に理解しておきたいのは、「自分でやった方が早い」と感じること自体は間違いではないということです。

例えば、役職者なら3分で終わる仕事でも、新人へ説明して任せれば15分かかることがあります。

初回だけを見れば、役職者が自分で行った方が効率的です。

しかし、その仕事が毎日発生するなら話は変わります。

今日15分かけて教えたことで、明日から本人が3〜5分でできるようになるなら、長期的には役職者の時間を大きく減らせます。

管理職は「今回何分かかるか」ではなく、「今後何回発生するか」まで考えて判断します。

役職者が自分でやった方がよい5つの場面

1.緊急性が非常に高い

営業中に今すぐ対応しなければ影響が大きくなる場面では、教育より問題解決を優先します。

例えば、

  • お客様を長時間待たせている
  • 重大なトラブルが起きている
  • 安全に関わる問題がある
  • 営業が止まっている

といった場面です。

この時は役職者がすぐ対応し、営業後に部下へ内容を教える方法があります。

2.失敗した時の影響が大きすぎる

経験がない部下へ、重大な金銭判断や安全に関わる仕事をいきなり任せる必要はありません。

まず役職者が対応し、見学や補助から経験させます。

3.本人に必要な基礎知識がまだない

何も知らない状態で「経験だからやってみて」と渡すのは委任ではありません。

まず教える、見せる、一緒に行うなどの準備が必要です。

4.今回限りで二度と発生しない特殊業務

今後ほとんど発生せず、教育効果も低い特殊な仕事であれば、役職者が処理した方が合理的な場合があります。

5.役職者本人にしか権限がない

部下が能力的にはできても、役職や権限上本人が決められない仕事があります。

この場合は役職者が判断します。

委任は何でも部下へ渡すことではありません。役職者本人が対応すべき仕事を見分けることも管理です。

時間がかかっても部下へ任せたい6つの場面

1.繰り返し発生する仕事

毎日、毎週、毎月のように繰り返す仕事は、教育コストを回収しやすい仕事です。

一度できるようになれば、その後は役職者が処理しなくて済みます。

2.部下の次の成長に必要な仕事

役職者候補を育てるなら、本人がまだ経験していない仕事を実際に担当させる必要があります。

例えば、

  • 新人教育
  • 小さな進捗管理
  • 営業前準備の管理
  • 問題の原因整理
  • 複数人への指示

などです。

本人が次の役職で必要になる経験は、現在の役職のうちから少しずつ渡します。

3.失敗しても修正できる仕事

育成に向いているのは、一定の失敗があっても店舗へ大きな影響を出さずに修正できる仕事です。

こうした仕事で判断経験を増やします。

4.役職者でなくてもできる仕事

役職者本人でなくても十分できる定型業務を、いつまでも管理職が抱えている必要はありません。

仕事を整理し、部下へ移します。

5.役職者の時間を継続的に奪っている仕事

一回5分でも、毎日何度も行う仕事なら年間では大きな時間になります。

その仕事を教えて任せることで、役職者は教育、数字管理、問題解決、店舗改善など、自分にしかできない仕事へ時間を使えるようになります。

6.複数人ができるようにしておきたい仕事

特定の役職者しかできない仕事が増えると、その人が休んだ時に業務が止まります。

通常業務として他のスタッフも覚えられる仕事なら、複数人へ経験を渡しておくことが店舗の安定につながります。

今日の業務効率だけでなく、「その人がいなくても回るか」という視点で委任を考えます。

自分でやるか任せるか迷った時の6つの質問

判断に迷った時は、次の質問で整理します。

① 今すぐ対応しないと大きな問題になるか

② この仕事は今後も繰り返し発生するか

③ 本当に自分にしかできない仕事か

④ 部下の成長に必要な経験か

⑤ 失敗しても途中で修正できるか

⑥ 今回教えれば次回から任せられるか

「今すぐ」「高リスク」「自分にしかできない」が強いなら、役職者が対応する判断が増えます。

反対に、「繰り返す」「育成につながる」「修正可能」「今後任せられる」が強いなら、時間を使ってでも部下へ渡す価値があります。

忙しい時は「今は自分でやる、後で教える」でもいい

現場では、教育できるタイミングばかりではありません。

営業中に忙しく、お客様への影響が出ている時に、その場で長く説明する必要はありません。

この場合は、

今は役職者が対応する → 営業後に振り返る → 次回から部下へ任せる

という方法が使えます。

問題なのは、「忙しいから今日は自分でやる」が毎回続き、永遠に教育されないことです。

緊急時に自分で処理することと、育成を後回しにし続けることは別です。

重要な場面を教育の練習場所にしない

部下を育てたいからといって、重大なトラブルや失敗時の影響が大きい場面で、無理に実践させる必要はありません。

役職者がまず対応し、その後に、

  • 何が起きていたか
  • どこを見て判断したか
  • 何を優先したか
  • なぜその対応を選んだか
  • 次回ならどこまで任せられるか

を教えることができます。

見学、振り返り、ロープレなどを使い、実際の重大案件へ入る前に準備させる方法もあります。

部下が遅くてもすぐ仕事を取り返さない

部下へ任せた仕事が遅いと、役職者は途中で手を出したくなります。

しかし、毎回途中から役職者が完成させれば、本人は最後まで仕事をやり切る経験を積めません。

まず、

  • どこで止まっているか
  • 本人は何が分からないのか
  • 期限には間に合うのか
  • どの部分だけ支援すれば進められるか

を確認します。

必要ならヒントや途中確認を増やし、本人が完了できる状態を作ります。

育成では「早く終わらせること」だけでなく、「本人が最後までやり切ること」に価値があります。

自分とやり方が違っても結果が合っていれば任せる

部下へ任せると、自分とは違う方法で仕事を進めることがあります。

この時、役職者自身の方法へ直し続けると、結局すべてを自分で管理する状態になります。

確認するべきなのは、

  • 守るべきルールを守っているか
  • 安全上の問題がないか
  • 期限を守っているか
  • 完成条件を満たしているか
  • 周囲へ悪影響を出していないか

です。

「自分と違う」と「間違っている」を分けることで、本当の委任ができるようになります。

「自分でやった方が早い」が危険な状態になっていないか

一度や二度自分で処理することに問題はありません。

ただし、次の状態が続いているなら注意が必要です。

  • 毎日同じ仕事を自分で処理している
  • 部下へ説明する時間を一度も取らない
  • 任せても途中ですぐ取り返す
  • 部下が「どうせ上司がやる」と考えている
  • 自分が休むと複数の仕事が止まる
  • 役職者にしか分からない仕事が増えている
  • 育成や改善へ使う時間がなくなっている

この状態では、「仕事ができる役職者」ではなく「仕事が集中している役職者」になっている可能性があります。

役職が上がるほど「自分でやらない能力」が必要になる

一般スタッフの時は、自分が速く正確に仕事をすることが大きな価値になります。

しかし役職が上がると、それだけでは足りません。

役職者には、

  • 誰へ任せるか決める
  • 必要なことを教える
  • 判断範囲を渡す
  • 進捗を確認する
  • 問題が起きた時に支援する
  • 次回は自分が関わらなくてもできる状態にする

能力が必要になります。

役職者として成長するとは、自分の処理能力だけを上げることではなく、自分以外の人ができる仕事を増やすことでもあります。

空いた時間を別の作業で埋めない

部下へ仕事を任せられるようになると、役職者の時間が空きます。

この時間を再び細かな作業で埋めてしまうと、役職者としての成長につながりません。

空いた時間は、

  • スタッフ教育
  • 部下の状態確認
  • 営業改善
  • 数字確認
  • 採用や人員計画
  • 問題の早期発見
  • 上司への報告・相談
  • 次の役職者候補の育成

など、役職者にしかできない仕事へ移していきます。

委任の目的は暇になることではなく、役職者の時間をより価値の高い仕事へ移すことです。

自分でやるか任せるかの判断チェックリスト

□ 今すぐ自分が対応する必要がある仕事か

□ 失敗した時の影響は大きいか

□ 本当に役職者にしかできない仕事か

□ 今後も繰り返し発生する仕事か

□ 今回教えれば次回から任せられるか

□ 部下の次の成長に必要な経験か

□ 失敗しても途中で修正できるか

□ 「自分でやる理由」が単に面倒だからになっていないか

□ 部下へ任せた後にすぐ仕事を取り返していないか

□ 自分と方法が違うだけで修正していないか

□ 任せて生まれた時間を管理職の仕事へ使っているか

管理職は「今日の5分」と「これからの100回」を比べる

役職者が一回だけ仕事を処理すれば、その瞬間は数分で終わるかもしれません。

しかし同じ仕事が今後100回発生するなら、その100回を自分が担当し続けることになります。

一方、最初に時間を使って教えれば、2回目、3回目と部下の速度は上がり、最終的には役職者が確認しなくても進む仕事へ変えられます。

「自分でやった方が早い」と思った時ほど、その仕事が今日だけの仕事なのか、今後何十回も発生する仕事なのかを考えることが重要です。

関連して学びたいテーマ

「自分でやる・任せる」を判断できるようになったら、次は役職者が慢性的に仕事を抱え込む状態そのものを見直します。

まとめ

「自分でやった方が早い」と感じること自体は間違いではありません。

緊急性が高い仕事、失敗時の影響が大きい仕事、本人に基礎知識がない仕事、役職者にしか権限がない仕事は、役職者自身が対応する判断も必要です。

一方、繰り返し発生する仕事、部下の成長に必要な仕事、失敗しても修正できる仕事、役職者以外でもできる仕事は、時間がかかっても任せる価値があります。

営業中の緊急時には自分で処理し、落ち着いた後に教育して次回から任せる方法もあります。

役職者が毎回仕事を取り返してしまえば、部下はいつまでも経験を積めません。

管理職が見るべきなのは、「今日一番早く終わる方法」だけではありません。「次回は自分がやらなくても終わる状態を作れるか」です。

自分で処理する仕事を減らし、部下ができる仕事を増やせるようになると、役職者自身もより大きな管理業務へ進めるようになります。