この講義で学べること
部下や新人が間違った行動をした時、役職者は何かを伝える必要があります。
その時によく使われるのが「注意」と「指導」です。
この2つは似ていますが、役割は同じではありません。
例えば、営業中に今すぐ止めなければならない行動があれば、その場では注意が必要です。
しかし、注意して終わるだけでは、本人が「なぜダメだったのか」「次からどうすればよいのか」まで理解できない場合があります。
注意は、その場の望ましくない行動を止めるために行います。指導は、原因を確認し、次回から正しい行動をできるようにするために行います。
この講義では、「注意」と「指導」の違い、どちらを使うべきか、注意だけで終わると何が起きるのか、部下の行動改善につなげる方法まで整理します。
注意と指導の基本
注意
今の行動を止める・修正する
↓
指導
原因を確認し、次回から正しくできる状態を作る

注意とは何か
注意とは、現在起きている好ましくない行動を止めたり、すぐ修正させたりするために行うものです。
例えば、
- 危険な行動をしている
- 店舗ルールと違う行動をしている
- お客様へ影響が出るミスをしている
- 今すぐ直さないと営業へ影響する
場面では、その場で伝える必要があります。
例えば、
「そこは今すぐ止めてください」
「その対応ではなく、こちらでお願いします」
という伝え方です。
注意の目的は、まずその瞬間の問題を止めることです。
指導とは何か
指導とは、その場の問題を止めるだけでなく、本人が次回から同じ問題を起こさないようにするための働きかけです。
例えば、
- なぜその行動をしたのか
- 本人は何を理解していなかったのか
- 本来どうするべきだったのか
- 次から何を変えるのか
- 次回どう確認するのか
まで整理します。
指導の目的は、「怒られたからやめる」ではなく、「本人が正しい行動を理解して再現できる」状態を作ることです。
注意と指導の違いを整理する
| 項目 | 注意 | 指導 |
|---|---|---|
| 目的 | 現在の問題行動を止める | 次回の行動を改善する |
| 時間 | 短時間になりやすい | 原因確認まで行う |
| 焦点 | 今起きている行動 | 原因・考え方・次の行動 |
| タイミング | その場で必要なことが多い | 落ち着いて話せる時でもよい |
| ゴール | 今の問題が止まる | 同じ問題の再発が減る |
注意と指導はどちらか一方だけを使うものではありません。
状況によっては、
その場で注意 → 営業後に指導
という流れが必要です。
その場では注意だけにした方がよい場面
営業中は、長く話すことで逆に店舗運営へ影響することがあります。
例えば、
- お客様対応の最中
- 営業が忙しい
- 他スタッフがすぐ対応を必要としている
- 安全上すぐ行動を変える必要がある
- 長く説明すると本人の仕事が止まる
場面です。
この場合は、
「今はこの対応に変えて。理由は営業後に確認しよう」
と短く伝えます。
営業中に必要なのは、問題を止めることと営業を継続することです。教育は落ち着いてから行っても構いません。
注意だけで終わると同じミスが繰り返されやすい
例えば部下へ、
「もっと周りを見て」
と注意したとします。
しかし本人が、
- 何を見ればよいのか
- どの状態なら動くのか
- 何を優先するのか
を理解していなければ、次も同じ問題が起きます。
この場合、必要なのは、
「周りを見る時は、お客様、キャスト、自分の担当業務、他スタッフの詰まりを見る」
という具体的な指導です。
注意だけで行動が変わらない時は、本人が改善方法を理解しているか確認する必要があります。
指導では最初に事実を確認する
部下を指導する時に、いきなり「なぜそんなことをしたの?」と責めると、本人が防御的になることがあります。
まず何が起きたのかを確認します。
- 何をしていたか
- いつ起きたか
- どんな結果になったか
- 本人はどう認識していたか
という事実です。
例えば、
「さっきの場面で、確認せずに対応を進めていたけど、本人としてはどういう判断だった?」
と確認します。
指導では、決めつける前に本人が何を見てどう考えたかを確認します。
問題行動の原因を分ける
同じミスでも、原因によって指導方法は変わります。
| 原因 | 必要な対応 |
|---|---|
| 知らなかった | 教育する |
| 理解していなかった | 説明方法を変える |
| 判断基準がなかった | 基準を教える |
| 経験不足だった | 実践・確認を増やす |
| 焦っていた | 優先順位・行動方法を整理する |
| 分かっていたが実行しなかった | 行動面を指導する |
| 意図的にルールを無視した | 責任と改善要求を明確にする |
「ミスをした」という結果だけではなく、「なぜそのミスが起きたか」まで見ることが指導です。
注意する時は人格ではなく行動を伝える
注意や指導をする時に避けたいのが、本人そのものを否定する言い方です。
例えば、
- 「本当に気が利かない」
- 「仕事できないね」
- 「やる気あるの?」
という表現です。
これでは何を直せばよいか分かりません。
代わりに、
「頼んだ確認が完了していないまま次の仕事へ進んでいた」
というように行動を伝えます。
指導では「あなたが悪い」ではなく、「この行動を変える必要がある」と伝えます。
「なぜダメか」まで説明する
本人が行動を変えるためには、理由を理解した方が再現しやすくなります。
例えば、
「確認してから次へ行って」
だけではなく、
「確認せず次へ進むと、不足が残って営業中に別のスタッフが対応することになる。だから完了確認までを一つの仕事として考えてほしい」
と伝えます。
理由を理解すると、似た状況でも本人が自分で判断しやすくなります。
指導では「次からどうするか」を本人にも考えさせる
役職者が改善策を全部説明する方法もあります。
しかし、一定の経験があるスタッフなら、本人にも考えさせます。
例えば、
- 「次に同じ状況ならどうする?」
- 「何を先に確認すれば防げる?」
- 「自分で変えられる部分はどこ?」
と聞きます。
本人が改善策を言語化することで、次の行動につながりやすくなります。
ただし、新人でそもそも正しい方法を知らない場合は、考えさせるだけでなく役職者が教えます。
人前で長く指導しない
営業中に問題が起きた場合、その場で短い注意が必要になることはあります。
しかし、原因確認や長い指導まで多くの人の前で行う必要はありません。
人前で長く責めると、
- 本人が内容より恥ずかしさへ意識を向ける
- 言い訳や防御に入りやすい
- 周囲も報告しにくくなる
- 営業そのものが止まる
可能性があります。
その場では必要な修正だけ伝え、詳しい指導は落ち着いて話せる環境で行うことが基本です。
注意の回数を増やすより原因をなくす
同じスタッフへ毎日同じ注意をしている場合、注意の強さを上げる前に原因を見直します。
例えば、
- そもそも教育できていない
- 本人が基準を理解していない
- 仕事の手順が複雑すぎる
- 役割分担が曖昧
- 本人の仕事量が多すぎる
- チェック方法がない
可能性があります。
毎日同じ注意が必要なら、「本人の意識」だけでなく「教育や仕組み」に問題がないかを見る必要があります。
同じミスが続く時は段階を上げて対応する
一度目のミスと、何度も同じミスを繰り返している状態を同じようには扱いません。
1回目|確認・教育
知らなかったのか、理解不足なのかを見る
繰り返し|原因分析・再指導
なぜ同じ行動が続くか確認する
理解済みでも改善しない|行動要求を明確にする
本人が変えるべき行動と期限を伝える
改善なし|上位者と対応を検討する
役割・業務範囲・評価を含めて適切な対応を考える
重要なのは、同じ言葉で何度も注意し続けないことです。
同じ方法で変わらなければ、原因と対応方法を変えます。
注意と感情を混同しない
問題が続くと、役職者も感情的になることがあります。
しかし、
- 声を大きくする
- 嫌味を言う
- 過去の失敗までまとめて責める
- 本人の性格を否定する
ことと、指導は別です。
強く伝える必要がある場面でも、
- 何が問題だったか
- なぜ重要か
- 次からどうするか
が分かる形で伝えます。
伝える強さより、相手が次に何を変えるかが明確になっていることが重要です。
注意した後に必ず指導が必要とは限らない
すべての小さなミスについて長い指導をする必要はありません。
例えば、本人がすでに原因を理解しており、すぐ修正でき、その後再発していないなら短い注意だけで十分なことがあります。
反対に、
- 本人が理由を理解していない
- 同じミスを繰り返している
- 影響が大きい
- 判断そのものが間違っている
- 今後も同じ場面が発生する
場合は、指導まで行う価値があります。
問題の大きさと再発可能性に合わせて、注意だけで終えるか、指導まで行うかを判断します。
指導の基本5ステップ
STEP1|事実を確認する
何が起きたかを整理する
STEP2|本人の考えを聞く
何を見て、どう判断したか確認する
STEP3|問題点と理由を伝える
何が違い、なぜ直す必要があるか説明する
STEP4|次の行動を決める
同じ状況で何をするか具体化する
STEP5|後日確認する
実際に行動が変わったかを見る
注意・指導の伝え方チェックリスト
□ 今すぐ止める必要がある問題か判断している
□ 営業中は必要以上に長く話していない
□ 人格ではなく行動を伝えている
□ 本人の考えを確認してから決めつけている
□ 問題の原因を分けている
□ なぜ改善が必要か説明している
□ 次回どうするか具体的に決めている
□ 本人が考えられる場合は改善案を聞いている
□ 同じ注意を何度も繰り返すだけになっていない
□ 感情と指導を混同していない
□ 人前で必要以上に長く責めていない
□ 後日、実際に行動が変わったか確認している
良い指導は「その場で反省させること」がゴールではない
指導した直後に本人が、
「すみませんでした」
と言えば、指導が終わったように感じます。
しかし、本当に見るべきなのは次の営業です。
- 同じ状況で行動を変えられたか
- 必要な確認をするようになったか
- 問題を早く報告できたか
- 同じミスが減ったか
を確認します。
謝罪は指導の成果ではありません。次の行動が変わった時に、初めて指導の効果が確認できます。
役職者は「注意する人」から「改善させる人」へ進む
一般スタッフでも、後輩の間違いへ気づいて注意することはできます。
役職者には、その先が求められます。
- なぜ問題が起きたかを見る
- 必要なら教育方法を変える
- 本人へ改善方法を理解させる
- 次回の行動を決める
- 改善したか確認する
ところまで管理します。
注意する回数が多いことが良い管理ではありません。同じ注意をしなくてもよい状態を増やすことが、役職者の仕事です。
関連して学びたいテーマ
注意と指導の違いを理解したら、次は「叱ること」と「指導すること」がどう違うのかを整理します。
- 叱ることと指導することの違い
- フィードバックとは?
- 部下へフィードバックする方法
- ミスした部下への対応
- 部下ができない原因を見分ける方法
- 「できない」と「やらない」の違い
- 部下の教育進捗を管理する方法
- 新人教育計画の作り方
- 教育チェックリストを使った育成方法
- ロープレを使ったスタッフ教育
- スタッフ教育・人材育成の進め方
- リーダーシップとチームマネジメント
まとめ
「注意」と「指導」は似ていますが、目的が違います。
注意は、その場で起きている望ましくない行動を止めたり、すぐ修正したりするために行います。
指導は、なぜその問題が起きたのかを確認し、本人が次回から正しい行動をできる状態へ変えるために行います。
営業中は短く注意し、詳しい原因確認や改善方法の整理は営業後に行うなど、状況によって使い分けます。
また、指導では人格を否定せず、事実、原因、正しい基準、次の行動を具体的に伝えます。
注意の目的は「今の行動を止めること」、指導の目的は「次の行動を変えること」です。同じ注意を繰り返さなくてもよい状態まで作ることが、人を育てる役職者に求められる指導です。