この講義で学べること
キャバクラの営業中は、役職者が感情的になりやすい場面があります。
例えば、
- 同じミスを何度も繰り返される
- 報告が遅れる
- 忙しい時に指示通り動いてもらえない
- 確認不足で別のスタッフへ負担が出る
- 前に教えた内容をまた間違える
といった場面です。
役職者も人なので、腹が立つこと自体はあります。
問題は、その感情のまま部下へ言葉をぶつけることです。
感情的に怒ると、「何を直してほしいのか」より「上司が怒っている」という情報の方が強く伝わることがあります。
すると、部下は改善するより、怒られないために隠す・聞かない・消極的になる可能性があります。
この講義では、役職者がイライラした時に感情と指導を分け、営業を止めずに必要なことを伝え、最終的に部下の行動改善へつなげる方法を整理します。
感情を指導へ変える基本
イライラする
↓
その場で必要な対応だけ行う
↓
事実を整理する
↓
原因を確認する
↓
次の行動を決める
↓
後日、改善したか確認する

感情が出ること自体は問題ではない
役職者になると、責任が増えます。
自分の仕事だけでなく、部下のミスや営業全体の遅れについても対応しなければならないため、イライラすることはあります。
例えば、忙しい時に同じ確認漏れが何度も起きれば、感情が動くのは自然です。
重要なのは、
「腹が立っている」ことと「今、部下へ何を伝える必要があるか」を分けることです。
感情は自分の状態です。
指導は相手の行動を改善するための仕事です。
ここを混ぜると、指導が感情の発散へ変わります。
感情的に怒ると何が起きるのか
感情的な指導が続くと、部下側にはいくつかの問題が起きやすくなります。
1.問題より「怒られたこと」が残る
強い言葉や大きな声で責められると、本人は内容よりも感情を記憶しやすくなります。
その結果、「何を直せばよいか」が曖昧になることがあります。
2.悪い報告を隠しやすくなる
問題を報告するたびに強く怒られる環境では、部下が「できるだけ報告したくない」と考える可能性があります。
その結果、小さい問題が大きくなってから発覚することがあります。
3.質問しなくなる
分からないことを聞くたびに嫌な反応をされると、本人は確認せず自己判断するようになることがあります。
新人ほど、この影響を受けやすくなります。
4.指示待ちが強くなる
自分で判断すると怒られる経験が続くと、部下は「何もしない方が安全」と学ぶことがあります。
結果として、役職者が求めている自発性とは逆の方向へ進む場合があります。
5.役職者への依存が増える
怒られないために細かいことまで確認するようになれば、役職者への質問と判断依存が増えます。
感情的な指導は、その場では相手を動かせても、長期的には報告・判断・自立を弱くすることがあります。
営業中にイライラした時は「解決」と「指導」を分ける
営業中にミスが起きた時、役職者が最優先するのは営業を正常な状態へ戻すことです。
この時に、原因を詳しく聞いたり、長時間説教したりすると営業がさらに止まります。
そこで、営業中は、
- 今やめるべき行動を止める
- 正しい対応を短く指示する
- 必要なら役職者が一時的にフォローする
- 「営業後に確認する」と伝える
ところまでにします。
例えば、
「今はこの対応に変えてください。理由と今後の対応は営業後に確認します」
と分けます。
営業中は問題解決、営業後は人材育成。この2つを分けるだけでも感情的な指導を減らしやすくなります。
感情が強い時はすぐ結論を出さない
イライラしている時ほど、役職者は原因を単純化しやすくなります。
例えば、
- 「やる気がない」
- 「何も考えていない」
- 「仕事をなめている」
と判断したくなることがあります。
しかし実際には、
- そもそも教わっていなかった
- 指示を違う意味で理解していた
- 複数の仕事が重なっていた
- 判断基準を知らなかった
- 報告すべきタイミングを理解していなかった
可能性もあります。
感情が強い時ほど、「本人の性格」を原因にする前に事実を確認します。
まず「何が起きたか」だけを整理する
指導する前に、事実と評価を分けます。
| 感情・評価 | 事実 |
|---|---|
| 全然報告しない | 問題発生から20分後に初めて報告した |
| 周りを全く見ていない | 担当作業中に他のスタッフの遅れへ気づかなかった |
| やる気がない | 期限までに依頼した作業が完了していなかった |
| 何度言っても分からない | 同じ手順を今回も一部飛ばした |
事実へ戻すことで、本人とも話しやすくなります。
「どういう人間か」ではなく「何が起きたか」から始めることが、感情を指導へ変える第一歩です。
部下へ最初から答えを決めつけない
指導する時は、本人の認識も確認します。
例えば、
- 「その時、どういう状況だと思っていた?」
- 「何を優先した?」
- 「報告しなくて大丈夫だと思った理由は?」
- 「どこで判断に迷った?」
と聞きます。
本人が何を考えていたかを聞くと、
- 知識不足
- 理解不足
- 判断ミス
- 優先順位ミス
- 意図的な未実行
などを分けやすくなります。
「できない」と「やらない」を感情で決めない
何度も同じミスが続くと、役職者は「やる気がない」と判断したくなります。
しかし、本人が本当にできないのか、分かっているのにやらないのかは分ける必要があります。
例えば、
| 状態 | 主な対応 |
|---|---|
| 知らない | 教える |
| 理解できていない | 説明方法を変える |
| 経験が足りない | 練習・実践を増やす |
| 判断基準がない | 基準を教える |
| 分かっているが実行しない | 行動責任を明確に指導する |
原因が違うのに、すべて「もっとちゃんとやれ」で済ませると改善しません。
感情的な言葉を「改善できる言葉」へ変える
イライラした時に頭に浮かぶ言葉を、そのまま伝える必要はありません。
| 感情的な伝え方 | 改善につながる伝え方 |
|---|---|
| 何回言えば分かるの? | 前回も同じ部分で抜けている。どこで迷っているか確認しよう |
| もっと周り見ろよ | 今は自分の担当だけを見ていた。次はこの3点まで確認してほしい |
| やる気ある? | 期限までに終わっていない。何が原因だったか教えて |
| なんで報告しないの? | この状態になった時点で報告が必要です。今回はどこで判断した? |
| 本当に仕事できないな | この手順がまだ安定していない。次回ここを確認しよう |
言葉を変える目的は、優しくすることではありません。
本人が「次に何を変えるか」を理解できる形へ変換するためです。
言ってはいけないのは「人格を決めつける言葉」
役職者が特に避けたいのが、本人全体を否定する言葉です。
- 「お前は本当に使えない」
- 「何をやらせてもダメ」
- 「向いてない」
- 「常識がない」
- 「頭使ってる?」
こうした言葉は、その場の問題を具体的に示していません。
さらに、改善できる行動ではなく本人の人格へ話が広がります。
役職者が扱うのは、部下の人格ではなく仕事上の行動・判断・結果です。
過去のミスを全部まとめて持ち出さない
感情的になると、今回の問題だけでなく過去の失敗まで思い出すことがあります。
すると、
「前もそうだったし、あの時もそうだった」
と話が広がります。
これでは今回何を改善するのかが分かりにくくなります。
過去の問題に共通性がある場合は、
「今回だけではなく、報告が遅れる傾向が続いている」
と共通課題として整理します。
過去を責めるために使うのではなく、繰り返している原因を特定するために使います。
人前で感情的に怒らない
営業中に必要な修正を人前で伝えることはあります。
しかし、大勢の前で長時間感情的に責めることは避けたい対応です。
本人が、
- 恥ずかしさ
- 防御
- 反発
- 周囲からどう見られているか
へ意識を取られ、本来の改善内容が入りにくくなるためです。
その場では必要なことだけ短く伝え、詳しい確認は別のタイミングで行います。
「今は話さない」という判断も役職者の仕事
自分がかなり感情的になっている時は、その状態で詳しい指導をしない選択もあります。
もちろん、危険や重大なルール違反など、すぐ止めるべき行動はその場で止めます。
しかし緊急性がなければ、
- 必要な事実だけ記録する
- 一度営業へ戻る
- 落ち着いてから話す
方法があります。
「今すぐ言いたい」と「今言うべき」は同じではありません。
強く伝える必要がある場面はある
感情的に怒らないことは、何でも柔らかく伝えることではありません。
例えば、
- 安全に関わる行動
- 重大なルール違反
- 重要情報の意図的な隠蔽
- 他者へ大きな被害を出す行動
- 理解している基準を繰り返し意図的に無視する
場合は、曖昧にせず強く伝える必要があります。
その場合でも、
- 何が問題なのか
- なぜ重大なのか
- 何を今後絶対に変える必要があるのか
を明確にします。
「強く伝える」と「感情をぶつける」は別です。
指導の最後は「次からどうするか」で終える
問題点を伝えた後は、次の行動を決めます。
例えば、
- 「次からこの状態になった時点で報告する」
- 「作業終了前にこの3項目を確認する」
- 「判断に迷ったら自己判断せず一度相談する」
- 「次回は本人主体で実施し、最後だけ確認を受ける」
という形です。
「もっとしっかりして」で終わるのではなく、次の営業で確認できる行動へ変換します。
謝罪より行動変化を見る
強く注意された部下は、
「すみませんでした」
と謝ることがあります。
しかし、役職者が確認すべきなのは謝罪の大きさではありません。
- 次回の報告が早くなったか
- 確認漏れが減ったか
- 同じ状況で正しく判断できたか
- 必要な相談ができたか
を見ます。
指導の成果は「反省しているように見えるか」ではなく、実際の行動が変わったかで判断します。
改善した時は必ず伝える
問題がある時だけ声をかけ、改善した時に何も言わないと、本人は正解が分からないことがあります。
前回の指導後に改善できたなら、
- 「今日は早く報告できていた」
- 「前回言った確認ができていた」
- 「その判断で合っています」
と具体的に伝えます。
これによって、本人は改善方向を確認できます。
毎回イライラするなら個人だけでなく仕組みを見る
同じ種類の問題が複数のスタッフで続く場合、個人だけの問題ではない可能性があります。
例えば、
- 新人全員が同じ業務を間違える
- 複数人から同じ報告が遅れる
- 担当者が変わるたび同じトラブルが起きる
なら、
- 教育内容が曖昧
- 報告基準が決まっていない
- 役割分担が不明確
- チェック方法がない
- 仕事量そのものが現実的でない
可能性があります。
何人にも同じことで怒っているなら、人を変える前に仕組みを疑う必要があります。
感情的になった時の指導6ステップ
STEP1|営業への影響を止める
今すぐ必要な行動修正だけ行う
STEP2|感情と事実を分ける
何が起きたかを具体的に整理する
STEP3|本人の認識を確認する
何を見て、どう判断したか聞く
STEP4|原因を分ける
知識・理解・経験・判断・行動のどこに問題があるか見る
STEP5|次の行動を具体化する
同じ場面で何を変えるか決める
STEP6|後日確認する
実際に行動が変わったかを見る
感情的な指導を防ぐチェックリスト
□ 今、自分が何に腹を立てているか認識している
□ 営業中に長い指導を始めていない
□ 感情と事実を分けている
□ 本人の考えを聞く前に原因を決めつけていない
□ 「やる気がない」など人物評価へ逃げていない
□ 人格を否定する言葉を使っていない
□ 関係のない過去の失敗まで持ち出していない
□ 本当に強く伝える必要がある問題か判断している
□ 次から何をしてほしいか具体的に伝えている
□ 謝罪だけで指導完了にしていない
□ 後日、改善した行動を確認している
□ 同じ問題が多発している場合は教育・仕組みも見直している
役職者の指導力は「怒らないこと」だけではない
感情を抑えられるだけでは、良い指導とは言えません。
何も言わずに我慢し続ければ、必要な基準まで伝わらなくなります。
役職者に必要なのは、
- 必要な時には問題を明確に指摘する
- 重大な内容は強く伝える
- 感情だけをぶつけない
- 原因を確認する
- 具体的な改善行動を決める
- 改善まで確認する
能力です。
感情的に怒らないとは、優しくすることではありません。必要な厳しさを残しながら、相手が改善できる形で伝えることです。
関連して学びたいテーマ
感情と指導を分けられるようになったら、次は部下の行動改善に欠かせない「フィードバック」の基本を学びます。
- フィードバックとは?
- 部下へフィードバックする方法
- ミスした部下への対応
- 部下ができない原因を見分ける方法
- 「できない」と「やらない」の違い
- 部下の教育進捗を管理する方法
- 新人教育計画の作り方
- 教育チェックリストを使った育成方法
- ロープレを使ったスタッフ教育
- スタッフ教育・人材育成の進め方
- リーダーシップとチームマネジメント
まとめ
キャバクラの役職者は、営業中の忙しさや部下のミスによって感情的になることがあります。
感情が出ること自体ではなく、その感情をそのまま部下へぶつけることが問題です。
営業中に問題が起きたら、まず営業への影響を止め、必要な行動修正だけを短く伝えます。
その後、落ち着いてから事実、本人の認識、原因、次の行動を整理します。
また、「やる気がない」「仕事ができない」と人物評価する前に、知識不足、理解不足、経験不足、判断基準不足、意図的な未実行などへ原因を分けることが重要です。
強く伝える必要がある場面はありますが、大声や人格否定は必要ありません。
役職者に必要なのは、怒りを我慢する能力だけではありません。感情を事実へ戻し、事実を原因へ分け、原因を次の行動へ変え、実際に改善したか確認する能力です。