この講義で学べること
役職者になると、自分で仕事をするだけではなく、部下や後輩へ仕事を任せる場面が増えます。
その時に必要なのが、分かりやすい指示を出す力です。
指示が曖昧だと、部下が一生懸命動いていても、役職者が期待した結果にならないことがあります。
例えば、
- 「早めにやっておいて」と言ったが、期限の認識が違った
- 「これお願い」と渡したが、どこまでやれば完成か伝わっていなかった
- 役職者は重要だと思っていたが、部下は優先度が低いと思っていた
- 部下は理解したつもりだったが、作業内容そのものを勘違いしていた
といった問題です。
良い指示とは、「自分が言いたいことを言うこと」ではなく、「相手が正しく動ける状態を作ること」です。
この講義では、役職者が部下へ仕事を指示する時に何を伝えるべきか、理解確認の方法、指示が伝わらない時に見直すポイントまで整理します。
良い指示の基本
何をするか
+
なぜするか
+
いつまでか
+
どこまでできれば完成か
+
理解できたか確認する

指示とは「仕事を頼むこと」だけではない
役職者の指示というと、「これをやって」と仕事を振ることだけをイメージしがちです。
しかし実際には、相手が迷わず動けるだけの情報を渡す必要があります。
例えば、
「営業前の準備をやっておいて」
という指示だけでは、
- どの準備をするのか
- 誰とやるのか
- いつまでに終えるのか
- 何を優先するのか
- どこまでできれば完了なのか
が分かりません。
部下に経験があれば補って動けることもありますが、新人や経験の浅いスタッフほど判断に迷います。
指示の質が低いと、部下の能力ではなく「情報不足」が原因で仕事が止まることがあります。
部下へ指示する時に伝えたい6つの項目
1.何をするのか
最初に、やってほしい仕事を具体的に伝えます。
例えば、
「準備しておいて」
よりも、
「営業開始までに入口・ホール・備品の準備を確認してください」
の方が具体的です。
相手によっては、さらに作業内容を細かく分けます。
2.なぜ必要なのか
すべての仕事で長い説明が必要なわけではありません。
ただし、新しい仕事や判断が必要な仕事では、目的まで伝えると理解しやすくなります。
例えば、
「入口を確認して」
だけでなく、
「営業開始直後にお客様を待たせないため、入口周辺の準備を先に確認してください」
と伝えれば、相手も何を優先して見るべきか理解しやすくなります。
目的が分かると、指示されていない細部でも相手が正しい判断をしやすくなります。
3.誰が担当するのか
複数人がいる場面では、誰への指示かを明確にします。
「誰かこれやっておいて」では、全員が他の人がやると思うことがあります。
担当者を決め、必要なら補助者も決めます。
例えば、
「Aさんが主担当、Bさんが確認をお願いします」
という形です。
4.いつまでに必要なのか
「早めに」「できたら今日中に」などの曖昧な期限は、人によって解釈が変わります。
期限が重要なら、できるだけ具体的にします。
- 営業開始10分前まで
- 21時まで
- 営業終了後30分以内
- 明日の出勤時まで
などです。
期限がない仕事でも、「いつ確認するか」を決めておくと進捗管理しやすくなります。
5.優先順位はどれくらいか
部下がすでに複数の仕事を持っている場合、追加した仕事をどこへ入れるのか伝える必要があります。
例えば、
「今やっている作業を終えてからで大丈夫」
なのか、
「今の作業を一度止めて、こちらを先に対応してほしい」
なのかで動き方は変わります。
仕事を追加する時は、何を優先するかまで伝えると部下が迷いにくくなります。
6.どこまでできれば完成なのか
指示で特に抜けやすいのが、完成条件です。
例えば「新人へ教えておいて」と言った場合、
- 一度説明すれば完了なのか
- 実際にやらせるのか
- 一人でできるところまで確認するのか
で結果は大きく変わります。
役職者側が完成状態を明確にすると、部下もどこまでやればよいか分かります。
指示した後は理解できたか確認する
役職者が説明したからといって、相手が同じ内容で理解したとは限りません。
特に新人、初めて任せる仕事、失敗した時の影響が大きい仕事では理解確認が必要です。
確認する時に、
「分かった?」
だけでは不十分なことがあります。
相手は分かっていなくても「はい」と答える場合があるからです。
例えば、
- 「最初に何からやる?」
- 「何時までに終わらせる?」
- 「終わったらどこまで確認する?」
- 「途中で分からなくなったら誰に聞く?」
と確認すると、理解度が分かりやすくなります。
指示は、伝えた時点ではなく「相手が理解した時点」で初めて成立します。
相手の経験によって指示の細かさを変える
すべての部下へ同じ細かさで指示する必要はありません。
新人に対しては、手順や完成条件まで細かく説明する必要があります。
一方、経験のあるスタッフに毎回すべて細かく指示すると、自分で考える機会を奪うことがあります。
| 相手 | 指示の出し方 |
|---|---|
| 新人 | 目的・手順・期限・完成条件まで具体的に伝える |
| 経験が浅い | 目的と重要ポイントを伝え、途中確認を入れる |
| 一人前 | 目的・期限・完成条件を中心に任せる |
| 役職者候補 | 目的と結果を示し、方法は本人に考えさせる場面を増やす |
指示の上手さとは、いつでも細かく説明することではなく、相手に必要な情報量を調整することです。
「やり方」まで指定するかは仕事によって変える
部下へ仕事を任せる時、やり方まで細かく指定するべきか迷うことがあります。
次のような仕事は、方法まで具体的に伝えた方がよい場合があります。
- 新人が初めて行う仕事
- 安全に関わる仕事
- 会計などミスの影響が大きい仕事
- 店舗として手順を統一する必要がある仕事
一方で、一定の経験があり、結果が合っていれば方法を任せられる仕事もあります。
何でも方法まで指定すると、部下は指示待ちになりやすくなります。
「必ず守る部分」と「本人へ任せる部分」を分けることが重要です。
指示が伝わらなかった時に部下だけを責めない
指示と違う結果になった時、最初に「なぜ言った通りにやらなかったのか」と考えたくなることがあります。
本人に原因がある場合もあります。
ただし、役職者側の指示にも問題がなかったか確認します。
- 指示内容は具体的だったか
- 期限を伝えたか
- 優先順位を伝えたか
- 完成条件を伝えたか
- 本人の経験に対して難しすぎなかったか
- 理解確認をしたか
- 途中で状況が変わったのに共有していなかったか
を確認します。
部下が間違えた時は、「本人の実行」と「役職者の指示」の両方を振り返ることが必要です。
指示を出しすぎる役職者にも注意する
部下へ指示を出すことが管理だと思い、細かいことまで全部口を出す役職者もいます。
しかし、必要以上に指示すると、
- 自分で考えなくなる
- 指示がないと動けなくなる
- 判断力が育たない
- 役職者へ確認が集中する
- 仕事の速度が遅くなる
ことがあります。
役職者の目的は、ずっと指示を出し続けることではありません。
最終的には、部下が自分で正しく判断して動ける範囲を増やすことが重要です。
急いでいる時ほど指示を短く整理する
営業中は長く説明できない場面もあります。
その場合は、最低限、
- 何をしてほしいか
- 誰が担当か
- いつまでか
- 何を優先するか
を伝えます。
例えば、
「Aさん、今の作業を一度止めて、入口のお客様対応をお願いします。終わったら自分へ報告してください。」
という形です。
緊急対応が終わった後、必要であれば背景や改善点を補足します。
指示は一方通行ではなく状況によって修正する
一度指示した内容が、最後まで正しいとは限りません。
営業中は状況が変わるため、必要に応じて指示も変更します。
その際は、
- 何が変わったのか
- 以前の指示のどこを変更するのか
- 新しい優先順位は何か
を明確に伝えます。
変更を伝えずに後から「今は違う」と怒っても、部下には分かりません。
部下への指示でよくある失敗
「いい感じにやって」で終わる
役職者の頭の中には完成イメージがあっても、部下には伝わっていません。
特に初めての仕事では、具体的な完成条件を伝えます。
期限を伝えない
役職者は「すぐ必要」と思っていても、部下は「今日中でよい」と考えていることがあります。
時間が重要な仕事ほど具体的に伝えます。
一度に大量の指示を出す
情報量が多すぎると、新人ほど覚えきれません。
優先順位を決めたり、複数回に分けたりします。
人前で感情的に指示する
緊急時に強く伝える必要がある場合はあります。
しかし日常的に怒鳴ったり威圧したりすると、部下が内容より怒られないことへ意識を向けるようになります。
指示を出したまま忘れる
指示した仕事が完了したか確認しなければ、途中で止まっていても気づけません。
重要な仕事ほど、確認のタイミングまで決めます。
指示を出す前の10秒確認
□ 何をしてほしいか自分の中で明確か
□ なぜ必要か説明できるか
□ 誰へ任せるのが適切か
□ 期限は明確か
□ 他の仕事との優先順位は伝える必要があるか
□ 完成条件は明確か
□ 相手の経験に合った説明量か
□ 理解確認が必要な仕事か
□ 途中確認が必要か
□ 完了後に誰へ報告するか決まっているか
指示の目的は「役職者の思い通りに動かすこと」ではない
部下へ指示を出すと、役職者が上で部下が下という意識になってしまうことがあります。
しかし指示は、人を支配するためのものではありません。
店舗として必要な仕事を明確にし、役割を分担し、チームとして成果を出すために行います。
だからこそ、役職や年齢で従わせるのではなく、相手が正しく動ける情報を渡すことが重要です。
良い指示を出せる役職者は、「言う力」より「伝わって動ける状態を作る力」を持っています。
関連して学びたいテーマ
指示の基本を身につけたら、次は「仕事を任せること」と「丸投げすること」の違いを理解し、部下へ任せられる範囲を広げていきます。
- 部下へ仕事を任せる方法
- 委任と丸投げの違い
- 部下へどこまで仕事を任せるべきか
- 任せた仕事を確認する方法
- 部下の進捗管理
- 指示待ちスタッフを育てる方法
- 部下が報告しやすい環境を作る方法
- スタッフ教育・人材育成の進め方
- リーダーシップとチームマネジメント
- 店長・責任者の役割とは何か
まとめ
キャバクラの役職者が部下へ指示を出す時は、単に「これをやって」と伝えるだけでは不十分です。
何をするのか、なぜ必要なのか、誰が担当するのか、いつまでなのか、優先順位、どこまでできれば完成なのかを必要に応じて伝えます。
また、重要な仕事や新人へ任せる仕事では、相手が本当に理解できているか確認することも必要です。
一方で、経験者へ細かい指示を出し続けると、自分で考える力を奪うことがあります。
良い指示とは、細かく命令することではなく、相手の経験に合わせて必要な情報を渡し、正しい結果まで自分で動ける状態を作ることです。
指示を出せるようになったら、次の段階では仕事そのものを部下へ任せ、役職者が抱え込まなくてもチームが動く状態を作っていきます。