この講義で学べること
スタッフ育成では、「目標を持たせることが大切」とよく言われます。
しかし、目標を設定しただけでは人は育ちません。
「もっと頑張る」「責任感を持つ」「店長を目指す」「数字を意識する」といった目標だけでは、本人が今日から何を変えればよいのか分かりません。
また、本人では動かせない数字だけを渡してしまうと、努力しても達成できない目標になる場合があります。
スタッフ目標の役割は、本人へプレッシャーをかけることではありません。「次に何をできるようになれば成長なのか」を明確にすることです。
スタッフ目標を決める7つの基準
- 目的|何のためにこの目標を設定するのか
- 役割|現在の役職・担当に合っているか
- 具体性|何をする目標なのか分かるか
- 本人影響|本人の行動で変えられる内容か
- 期限|いつまでに達成するのか
- 判定|達成・未達を確認できるか
- 成長|達成すると次の仕事へ進めるか

目標設定は「数字を渡すこと」ではない
目標というと、売上や採用数などの数字を設定するイメージがあります。
もちろん、担当業務によっては数字の目標が必要です。
しかし、スタッフ育成では数字以外にも目標があります。
- 一人で完結できる仕事を増やす
- 部下へ仕事を教えられるようになる
- 問題を早い段階で報告できるようになる
- 担当者の仕事を後追いできるようになる
- 数字を使って状況を説明できるようになる
こうした能力も、店舗運営では重要な成長です。
最初に「何のための目標か」を決める
目標設定で最初に確認するのは、その目標を達成することで何を変えたいのかです。
例えば、
- 担当業務を一人で任せられるようにする
- 役職者候補として育てる
- 採用担当として成果を出せるようにする
- 部下育成を任せられるようにする
- 報告不足を改善する
などです。
目的が曖昧な目標は、達成しても何につながったのか分からなくなります。
業績目標と成長目標を分ける
スタッフの目標は、大きく「業績目標」と「成長目標」に分けて考えると整理しやすくなります。
業績目標
本人が担当する領域で、どの結果を作るかという目標です。
- 面接数
- 入店数
- 担当者の売上
- 担当業務の完了件数
- 教育完了人数
成長目標
本人自身がどの能力を身につけるかという目標です。
- 仕事を任せたあとに後追いできる
- 問題の兆候段階で相談できる
- 新人へ一人で教育できる
- 優先順位を付けて業務を処理できる
- 担当数字を自分で分析できる
結果だけでなく、本人が何をできるようになるかも設定します。
「頑張る」を目標にしない
「今月はもっと頑張ります」という言葉は意欲としては問題ありません。
しかし、管理する目標としては曖昧です。
何をすれば頑張ったことになるのか、店長と本人で認識が変わるからです。
例えば、
「報告を頑張る」
ではなく、
「問題が発生した時点ではなく、問題になりそうな兆候を確認した段階で上司へ相談する」
というように、実際の行動へ変換します。
「成長する」を目標にしない
「今月は成長する」「役職者らしくなる」といった目標も同じです。
何をもって成長なのかが分かりません。
役職者らしさを求めるなら、具体的に必要な行動へ分けます。
- 部下へ仕事を振る
- 期限まで後追いする
- 問題を自分で整理して報告する
- 担当数字を説明する
- 新人へ基本業務を教える
こうすれば、成長したかどうかを確認できます。
本人が動かせる目標にする
目標は、できるだけ本人の行動で変化させられる内容にします。
例えば店舗全体の売上は、一人のスタッフだけでは完全に動かせません。
店舗売上を目標として共有することはできますが、個人評価へ使う場合は本人の責任範囲へ落とす必要があります。
本人が採用担当なら面接・入店、教育担当なら担当者育成など、本人が影響できる部分を設定します。
結果目標だけでなく行動目標も持つ
結果は、本人の努力だけでは決まらない場合があります。
例えば「今月3名入店」という結果目標を持っていても、応募数自体が少なければ達成が難しくなることがあります。
そこで、必要に応じて結果へつながる行動も確認します。
- 業者へ何件連絡するか
- 面接後に何を改善するか
- 応募者への返信速度をどうするか
- どの頻度で進捗確認するか
結果目標と行動目標を分けることで、未達時の原因も見つけやすくなります。
目標は現在地から決める
全スタッフへ同じ目標を渡す必要はありません。
新人と役職者候補では、次に必要な成長が違います。
例えば新人なら、まず一人で基本業務を完了できる状態が目標になります。
すでに基本業務ができるスタッフなら、次は後輩へ教えることが目標になるかもしれません。
本人の現在地から一段上を考えます。
いきなり難しすぎる目標を渡さない
成長させたいからといって、現在の能力から離れすぎた目標を渡すと失敗しやすくなります。
例えば、自分の仕事をまだ安定して完了できないスタッフへ、いきなり複数人のマネジメントを任せても基礎が崩れます。
自分の仕事を完了する、他人へ教える、他人の進捗を管理するというように、段階を踏んで目標を設定します。
簡単すぎる目標も成長につながらない
必ず達成できる目標だけを設定しても、本人の能力は広がりません。
現在できている仕事をそのまま目標にするのではなく、少し上の役割や能力へ進める内容を設定します。
ただし、難易度は本人の経験や支援体制に合わせます。
期限を必ず決める
「できるようになるまで頑張る」では、いつ確認すればよいか分かりません。
目標には期限を付けます。
- 今週中
- 月末まで
- 3か月以内
- 次回面談まで
など、目標の大きさに合わせて設定します。
長期目標は途中地点を作る
3か月、半年など長い期間の目標を設定する場合は、最終期限だけでは進捗が見えにくくなります。
途中に確認地点を作ります。
例えば3か月後に新人教育を一人で任せる目標なら、
- 1か月目|教育内容を理解する
- 2か月目|上司同席で教える
- 3か月目|一人で教育を完了する
というように段階へ分けられます。
達成条件を決める
「新人教育ができるようになる」という目標だけでは、できたかどうか判断が分かれます。
何をもって達成とするのかを決めます。
- 一人で説明できる
- 上司の補足なしで完了できる
- 新人から質問されても回答できる
- 教育後に確認テストを実施できる
などです。
白黒を付けられる状態にすると、評価時の認識差が減ります。
数字目標にも達成条件を付ける
数字目標は分かりやすいように見えますが、条件が必要な場合があります。
例えば「面接10件」という目標なら、予約件数なのか実施件数なのかで意味が変わります。
店舗内で数字の定義を統一します。
目標を多くしすぎない
スタッフへ改善してほしいことが多いと、目標も増やしたくなります。
しかし、一度に多くの目標を持たせると優先順位が分からなくなります。
本人の現状で最も重要なものへ絞ります。
必要であれば、主目標と補助目標に分ける方法もあります。
店舗課題だけで目標を決めない
店舗側が困っていることを、そのまま個人目標へする場合があります。
例えば人手不足だからといって、全スタッフへ同じ採用目標を渡しても適切とは限りません。
店舗課題と本人の役割をつなげます。
誰がどの課題を担当するのが適切なのかを考えます。
本人の希望だけで目標を決めない
本人が「これをやりたい」と希望することは、成長意欲として重要です。
ただし、本人の希望だけで目標を決めるわけではありません。
現在の役割で必要な仕事や、本人に不足している能力もあります。
本人の希望と店舗側が求める成長をすり合わせます。
店長が一方的に目標を押し付けない
店舗として必要な目標はありますが、本人が内容を理解していないまま渡しても行動につながりにくくなります。
目標を設定するときは、
- なぜ必要なのか
- 達成すると何が変わるのか
- 本人はどう考えているか
- 何が難しそうか
を確認します。
目標を下げることと現実的にすることは違う
本人が達成できそうにないからといって、すぐに目標を下げる必要はありません。
まず、なぜ難しいのかを確認します。
- 能力不足なのか
- 経験不足なのか
- 時間不足なのか
- 店長側の支援不足なのか
- そもそも設定が現実離れしているのか
原因を確認したうえで調整します。
店長側の支援も目標とセットで決める
新しい能力を身につけさせるなら、本人へ任せるだけでは不十分な場合があります。
店長側も、
- 必要な経験を与える
- ロープレを行う
- 途中確認する
- 参考例を見せる
- 役職者を教育担当に付ける
など、達成に必要な支援を決めます。
目標設定だけして放置しない
月初に目標を設定し、月末まで一度も確認しない状態では管理になりません。
途中で進捗を確認します。
- 予定通り進んでいるか
- 何につまずいているか
- 支援が必要か
- 目標そのものに修正が必要か
を確認します。
未達のときは「本人のやる気」で終わらせない
目標未達になると、「本人の意識が低かった」と結論づけることがあります。
しかし、原因はそれだけとは限りません。
- 目標が曖昧だった
- やり方を教えていなかった
- 途中確認がなかった
- 必要な経験を与えていなかった
- 目標が本人の責任範囲外だった
場合もあります。
本人側と管理側の両方を確認します。
達成したら次の段階へ進める
同じ目標を何か月も繰り返す必要はありません。
安定して達成できるようになったら、次の能力へ進みます。
例えば、
- 自分で仕事を完了できる
- 他人へ教えられる
- 他人へ任せられる
- 他人の進捗を管理できる
- 問題を発見して改善できる
というように成長段階を上げていきます。
目標設定でよくある失敗
失敗1|「頑張る」を目標にする
達成したかどうかを確認できません。
失敗2|本人が動かせない数字だけを渡す
努力と結果の関係が分からなくなります。
失敗3|目標を多く設定しすぎる
本人が何を最優先すべきか分からなくなります。
失敗4|全員へ同じ目標を渡す
役割や成長段階に合わない目標になります。
失敗5|期限を決めない
いつ進捗を確認すればよいか分かりません。
失敗6|設定したあと放置する
本人が途中でつまずいても店長が気づけません。
失敗7|未達をすべて本人の責任にする
目標設計や上司側の支援不足を見落とします。
スタッフ目標を作る7ステップ
- 現在地を確認する
本人が今どこまでできているか整理します。 - 次に必要な能力を決める
現在の役割と次の役割から考えます。 - 業績目標と成長目標を分ける
結果と本人の能力を整理します。 - 具体的な行動へ変える
「頑張る」ではなく、何をするか明確にします。 - 期限と達成条件を決める
いつまでに何ができれば達成なのか決めます。 - 店長側の支援を決める
必要な経験・教育・確認を用意します。 - 途中と最後に確認する
進捗と結果を確認し、次の目標へつなげます。
店長用|スタッフ目標設定チェックリスト
- 目標を設定する目的が明確か
- 本人の現在地を確認したか
- 現在の役割に合っているか
- 次の成長につながる内容か
- 業績目標と成長目標を分けたか
- 「頑張る」「意識する」だけになっていないか
- 本人の行動で変えられる内容か
- 具体的な行動が分かるか
- 期限を決めたか
- 達成条件が明確か
- 難易度が高すぎないか
- 簡単すぎないか
- 目標を増やしすぎていないか
- 本人へ目的を説明したか
- 店長側の支援を決めたか
- 途中確認日を決めたか
良い目標設定ができている完成基準
良い目標とは、見た目が立派な目標ではありません。
次の状態になっていることが重要です。
- 本人がなぜこの目標を持つのか理解している
- 何をすればよいか分かっている
- 本人自身の行動で変えられる
- 期限が決まっている
- 達成・未達を判断できる
- 結果目標と行動目標を分けられる
- 現在の能力から一段上の内容になっている
- 店長側の支援内容も決まっている
- 途中で進捗確認できる
- 達成後に次の成長へ進める
店長の目標設定は「やらせること」ではなく「次の成長を見せること」
目標を使って部下を追い込むことは簡単です。
しかし、それだけでは人材育成にはなりません。
本人の現在地を確認し、次に必要な能力を明確にし、その能力を身につけるための行動を決める。
そして、店長側も必要な経験や支援を用意する。
この流れがあることで、目標は単なる数字管理ではなく育成の道しるべになります。
良い目標とは、本人が「次に何をできるようになればいいか」を自分の言葉で説明できる目標です。
まとめ
キャバクラ店長がスタッフへ目標を設定するときは、「頑張る」「成長する」「もっと責任感を持つ」といった曖昧な内容で終わらせてはいけません。
本人の現在地と役割を確認し、業績目標と成長目標を分け、本人が実際に変えられる行動へ落とし込みます。
さらに、期限、達成条件、途中確認、店長側の支援まで決めることで、目標を継続的な育成へつなげられます。
「何を頑張るか」ではなく、「次に何をできるようになるか」を明確にすることが、店長に必要なスタッフ目標設定の基本です。