この講義で学べること
営業中は、一つの仕事だけを順番に処理できるとは限りません。
ドリンク作成、オーダー処理、洗い物、氷やグラスの補充、ボトル対応、ホールスタッフやキャストからの依頼など、複数の業務が同時に発生します。
このような状況で重要になるのが、「今、何を先に処理するべきか」を判断する力です。
この講義では、優先順位を決める判断基準、営業を止める要因の見つけ方、緊急性と重要性の考え方、周囲との連携について学びます。
優先順位判断の基本
「今、何をしたいか」
ではなく
「今やらなかったら、次に何が起きるか」で考える
営業中の優先順位とは
営業中の優先順位とは、複数の業務が重なったときに、営業への影響を考えながら処理する順番を決めることです。
単純に「先に頼まれた仕事から行う」「目についた仕事から片付ける」ということではありません。
状況を見ながら、どの仕事を後回しにすると影響が大きくなるのかを考えます。
優先順位を考える4つの判断基準
判断に迷ったときは、次の4つを確認します。
判断基準1|安全
ケガや事故につながる危険はないか
判断基準2|待ち時間
すでにお客様を待たせていないか
判断基準3|営業停止リスク
このまま放置すると数分後に営業が止まらないか
判断基準4|後回し可能性
今やらなくても問題なく後で処理できるか
この4つを基準にすると、目の前の仕事に振り回されにくくなります。
安全に関わる問題は最優先で考える
営業中に危険な状態が発生している場合は、通常の作業よりも安全確保を優先します。
例えば、割れたグラス、床への大量の液体、転倒しそうな物、通路を塞いでいる物などです。
こうした状態を放置すると、お客様・キャスト・スタッフのケガにつながる可能性があります。
割れ物・転倒・床濡れ・通路障害など
↓
事故になる前に安全を確保する
必要に応じて周囲へ共有し、一人で処理しきれない場合は応援を求めましょう。
お客様を待たせている仕事を確認する
安全上の問題がない場合は、現在お客様を待たせている仕事を確認します。
例えば、乾杯用ドリンク、すでに長く待っているオーダー、提供直前で止まっている商品などです。
待ち時間が長くなるほど、お客様の満足度は下がりやすくなります。
ただし、「お客様に関わる仕事だから必ず最優先」と固定的に考えるのではなく、このあと営業そのものが止まる問題がないかも同時に確認します。
営業を止める要因を見つける
目の前に注文が入っていても、グラスや氷が完全になくなれば、その後のドリンク作成は続けられません。
そのため、次のような状態は早めに対応する必要があります。
数分後に営業を止める可能性がある状態
- 使用できるグラスがほとんど残っていない
- 氷が切れそうになっている
- ミネラルウォーター・炭酸水など主要な割り材が不足している
- よく使用する酒類がなくなりそうになっている
- 作業スペースが使えないほど洗い物やゴミが溜まっている
今はまだ使える
ではなく
このまま数分続いたら止まるかを見る
後回しにできる仕事を見極める
すべての仕事を今すぐ処理する必要はありません。
例えば、今すぐ営業へ影響しない整理整頓や補充の一部は、ピークが落ち着いてから対応できる場合があります。
一方で、後回しにした結果として数分後に営業が止まるのであれば、先に処理する必要があります。
今すぐやる? 後でやる?
後回しにしたときの影響を考えて分ける
「今やる仕事」と「あとでも間に合う仕事」を分けることも、優先順位判断です。
固定された順位だけで判断しない
優先順位には、どの店舗でも絶対に変わらない固定順位があるわけではありません。
同じ仕事でも、そのときの状況によって重要度は変わります。
例えば、通常なら洗い物よりドリンク作成を優先する場面が多くても、使用できるグラスが残りわずかであれば、洗浄を先に進めなければ数分後に営業が止まります。
仕事の名前を見る
より
後回しにした結果を見る
そのため、「何番目の仕事か」を覚えるより、「後回しにすると何が起きるか」を考える習慣を身につけることが大切です。
自分一人で全部やろうとしない
複数の重要業務が重なった場合、一人で順番に処理するだけでは間に合わないことがあります。
そのときは、周囲へ状況を共有し、役割を分けます。
例えば、自分がドリンク作成を続けながら、別のスタッフへ氷やグラスの補充を依頼することで、営業を止めずに両方を進められる場合があります。
優先順位を決める
=
全部自分でやることではない
誰が何をやれば営業全体が最も早く整うかまで考える
周囲を見る習慣をつける
優先順位を正しく判断するためには、自分の作業だけを見ていてはいけません。
営業中は、次のような情報にも目を向けます。
- オーダーがどれくらい溜まっているか
- ホールスタッフがどの程度動けているか
- キャストやお客様が待っていないか
- グラス・氷・割り材の残量
- 洗い物やゴミの溜まり具合
- 次の予約や団体来店予定
情報が多いほど正確な判断ができるため、視野を少しずつ広げていきましょう。
営業が落ち着いている時間に先回りする
優先順位の判断が必要になる回数を減らす方法があります。
それが、営業が落ち着いている時間に次の混雑を予測して準備することです。
グラスを洗う、氷や割り材を補充する、酒類の残量を見る、作業台を整えるなど、先にできる仕事を済ませておけば、ピーク中に同時発生する問題を減らせます。
優先順位が上手い人は、
忙しくなる前に問題を減らしている。
判断に迷ったら共有・確認する
自分で優先順位を考えることは大切ですが、すべてを自己判断で処理する必要はありません。
判断を間違えると影響が大きい場面や、自分では状況を把握しきれない場合は、責任者や周囲のスタッフへ確認します。
経験が浅いうちは、判断後に「この順番で大丈夫ですか」と確認することも学習になります。
経験を重ねることで、どの状況で何を優先するべきかが少しずつ分かるようになります。
ケーススタディ|複数の仕事が同時に発生した場合
営業のピーク中に、次の状況が同時に発生しました。
- 団体席から複数のドリンクオーダーが入っている
- 別の席からボトルの依頼が入っている
- 使用できるグラスが少なくなっている
- 氷も残りわずかになっている
この場合、「必ずこの順番が正解」と決めることはできません。
まず現在使用できるグラスと氷でどこまでオーダーを処理できるのかを確認します。
そのまま作成を続けると数分後にグラスや氷が完全になくなるのであれば、周囲へ状況を共有し、補充を同時進行できるよう役割を分けます。
判断例
自分:待っているドリンクオーダーを処理
別スタッフ:グラス・氷を補充
共通:進行状況を共有しながら営業停止を防ぐ
重要なのは、一人で決められた順番に処理することではなく、問題を共有し、複数の業務を止めずに進めることです。
よくある失敗
- 目の前にある仕事から反射的に手を付ける
- 固定された順位だけで判断する
- グラスや氷など営業停止につながる不足を見落とす
- 一つの仕事に集中しすぎて周囲を見なくなる
- 自分一人で全部処理しようとする
- 判断に迷っても周囲へ共有しない
- 落ち着いている時間に準備せず、混雑してから補充する
優先順位のミスは、作業能力の問題だけではなく、状況を整理せずに動き始めることで起こります。
現場チェックリスト
複数の業務が重なったときは、次の項目を確認しましょう。
□ 安全面で今すぐ対応する問題はない
□ 長く待っているお客様やオーダーを把握している
□ グラス・氷・割り材などが切れそうではない
□ 今やる必要がある仕事と、後でもできる仕事を分けている
□ 周囲のスタッフの状況を見ている
□ 一人で難しい場合は役割分担している
□ 判断に迷う場合は責任者へ共有・確認している
現役店長からのアドバイス
優先順位を判断できるスタッフは、単に仕事が速いスタッフとは違います。
目の前の仕事だけでなく、「これを後回しにしたら何が起きるか」を考えています。
また、本当に仕事ができる人ほど、一人で全部を抱え込もうとしません。
必要な場面では周囲へ声をかけ、役割を分けて営業全体を動かします。
自分が忙しいかどうかではなく、
店舗全体のどこが止まりそうなのかを見る。
この視点を持てるようになると、ドリンカーとしての動きは大きく変わります。
今回のまとめ
営業中の優先順位は、決められた仕事の順番を暗記することではありません。
- 安全に関わる問題を確認する
- お客様の待ち時間を確認する
- 営業を止める要因がないか確認する
- 後回しにできる仕事を見極める
- 固定順位だけで判断しない
- 周囲を見て必要なら役割分担する
- 落ち着いている時間に次の混雑へ備える
「今何をするか」だけでなく、「今それをしなかったら次に何が起きるか」を考えることが、優先順位判断の基本です。
理解度チェック
Q1. 優先順位を判断するときの4つの基準を答えてください。
Q2. 固定された順位だけで判断してはいけないのはなぜですか?
Q3. グラスや氷が切れそうな場合、どのように判断しますか?
Q4. 一人で複数業務を処理しきれない場合は、どのように対応しますか?
Q5. 営業が落ち着いている時間に準備する理由は何ですか?
この講義で身につくこと
□ 営業中の優先順位を決める判断基準を理解できる
□ 安全・待ち時間・営業停止リスクを見ながら判断できる
□ 状況によって優先順位を変更できる
□ 周囲を見ながら役割分担できる
□ 次の混雑を見越して先回りできる
次の講義
次は「第11講 ホールスタッフとの連携」へ進みます。
ドリンカーだけで仕事を完結させるのではなく、ホールスタッフと情報を共有し、役割を分担しながら営業全体を止めないための連携方法を学びます。